【コラム】ドイツ流 判断を鍛える!ゲームで生きるトレーニングとは。

ドイツと日本でサッカー選手、サッカー指導者として活動してきている土屋慶太氏は、現在、関東サッカーリーグ1部(社会人)に所属する「東京23FC」で監督を務める傍ら、
東京の名門ジュニアクラブ「修徳FC」でテクニカルダイレクターも務めています。
今回のコラムは全3回。
2月4日(月)に開催される土屋慶太(UEFA A級ライセンス 東京23FC監督)特別セミナー『ドイツ流 育成年代で大切にしたいサッカー指導のポイント』に先立ち、ドイツと日本で育成年代から社会人まで幅広い年代のサッカー指導に携わってきた土屋慶太氏の指導において大切にしているポイントについて迫っていきます。

第一弾はこちら【コラム】土屋慶太監督(東京23FC UEFAA級)が大切にするサッカー指導のポイント

 

育成年代でも社会人でも自らの持つ技術やフィジカルを試合で生かしきれないということがある。
土屋氏は、そういった選手は

「相手や味方など局面の状況を把握して判断できていない」と語る。

今回のコラムでは、
「自分の責任を負いつつ自由にプレーできるのがサッカーの面白いところ」と語る土屋氏が、
育成年代や社会人年代のサッカー選手に対し、
いかにしてその面白さを伝えているのかドイツでの経験を交えながら語って頂きました。

 

「試合を見て深く考えて仕組みを理解する時間が必要。」

 

関東リーグ1部に所属する東京23FCには、
20代前半の大卒若手選手から30代以上のJリーグを経験したベテラン選手まで、所属選手は年齢層もこれまでの経験も幅が広い。

そういったチームに対しても、練習内容は、

「マンネリ化せず常に考える余地を与えるために異なったメニューを積極的に取り入れ、ボールを使い“サッカーをしながらサッカーのトレーニングをする”。」という。

土屋氏は、東京の名門ジュニアクラブ「修徳FC」でテクニカルダイレクターを務め、小学生に対しての指導や若手指導者の養成も行っているが、
修徳FCでも「できる限り判断する要素を取り入れる」ことを心掛けているそうだ。

 

判断の伴ったトレーニングの中で、東京23FCと修徳FCで選手に求めていることは、

「一から十まで指示を待って言われたとおりにプレーするのではなく、
自分で判断し自分の責任でプレーすることです。

指示を待ってただがむしゃらに走るのではなく、
いつどこに走るか、もしくは止まっているべきか、
相手や味方の状況を把握しながら自分で判断してプレーする必要があります。

そのためにも、もっともっとサッカーの試合を見て深く考えて仕組みを理解する時間が必要。」

 

ドイツには、ドリブルやパスなどある特定の要素のみに極端に特化したチームはなく、
日本国内ほどスタイルに大きな違いはない。
環境的にもプロからアマチュアまでほとんどのクラブが社会人から育成年代までチームがあり、
子どもが自チームの社会人の試合を身近で観戦できるようになっているので、
大人と全く別のサッカーをしている状況にならないのではないかと土屋氏は推測する。

試合を観戦してサッカーの仕組みを理解することは、
戦術面を理解すること、局面の状況を理解することに繋がる。

「あれだけたくさんのドイツに連れて帰りたい子どもたちがいたのにどこに行ってしまったんだ」

2005年から5年間、ドイツで中学生年代から社会人年代までを指導し、
ドイツサッカー協会公認A級ライセンスを取得した土屋氏は、
日本とドイツのサッカー指導法を比較し、こう語る。

「これは僕のドイツの師匠が日本に来てインタビューなどでも言っていることですが、
日本のほうがボール扱いに長けてしなやかな動きをする子どもがたくさんいると思います。

ドイツに連れて帰りたい子どもがたくさんいると言っていました。」

その理由は、
テクニックを身に着けるためにドリル形式の反復練習を多く行っているから。
そして
日本の子どものほうが比較的お行儀がよく、
黙々とドリル形式の反復練習に取り組ませやすいということに起因するという。

それに対して、

「ドイツでは、
子どもたちの興味を引くためにも比較的競争形式やゲーム形式のメニューが多くなる。
したがって、テクニック面で数をこなしていないので日本の子どもたちと比べるとボール扱いに関しては劣ることが多いと思います。」

「小学生年代では日本とドイツを比較したときに体格面や判断の面で大きな差が出にくいので、
反復練習を行える規律が確立されテクニック面に磨きをかけた日本のジュニア年代のチームは世界でも結果を出している」
と土屋氏は語る。

 

しかしながら、日本の中学生年代から高校生年代の選手のプレーを観ながら、
前途の土屋氏のドイツの師匠は、

「あれだけたくさんのドイツに連れて帰りたい子どもたちがいたのにどこに行ってしまったんだ」
と言うといいます。

それは、小学生年代で磨いたテクニックが試合の中で反映されていないからだと土屋氏は考える。

「テクニック面を磨くためには反復練習が必要ですが、判断を伴っていないことがあるので、
そのテクニックの使いどころをわかっていないことが多いと思います。

質の高い道具を身に着けてもその使いどころがわかっていないということがあります。

いつどこでドリブルを仕掛けるのか、パスをするのか、シュートを打つのかという判断ができていないということです。」

土屋氏は、著書である「ドイツ流 サッカーライセンス講座」(ベースボール・マガジン社)のなかで、中学生年代や高校生年代からは、グループ戦術やチーム戦術を段階的に導入していくということを語っている。

中学生年代や高校生年代からは身に着けたテクニックをプレッシャー下でも使えるようにしていくことが重要となる時期であるが、ここでも日本のほうがドリル形式のトレーニングが多いそうだ。
また、日本のほうが中学生年代から負荷の高い持久力のトレーニングが多く行われているという。

これは、判断を伴わないので、走り回るけど効果的なポジションを取れないことになるのだそうだ。

 

土屋氏はほぼ毎年、ドイツで冬に行われている高校1年生の5人制の室内サッカー大会に帯同している。

その大会では、判断が伴っていない日本のチームはことごとく粉砕されてしまい、改めて実戦で使える技術や個人戦術が必要だと思い知らされるのだという。

「相手のいないところでのボール扱いがうまいチームや、
がむしゃらに球際を戦うチームはなかなか勝てません。
逆にチームで効果的なポジションを取りドリブルとパスを使い分けるチームは、
シンプルだけどプレッシャー下でも質の高いプレーを見せることができたときは体格で勝るブンデスリーガの下部組織などにも勝利を収めています。」

サッカーにおいて「認知」「予測」「判断」「実行」という言葉があるが、
パスやドリブルの「実行」の部分のみではなく、
全ての要素が含まれるトレーニングがサッカーというゲームにとって非常に重要であるということが、
土屋氏のドイツと日本を比較した分析から読み取ることが出来た。

次回のコラムはいよいよ最終回。
幅広い年代を指導する土屋氏が、
いかにしてトレーニングを組み立て、チームを率いているのかについて迫ります。

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日時:2019年2月4日(月) 19:00~
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土屋慶太(UEFA A級ライセンス 東京23FC監督)特別セミナー『ドイツ流 育成年代で大切にしたいサッカー指導のポイント』